理事長所信

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理事長
第20代 理事長

田仲 聡

SATORU TANAKA

志に生きる

「はじめに」

今から20年前、我が郷土の限りない発展と明るい豊かな社会を築くために、会員一人ひとりの英知と、未知の可能性を切り拓こうとする勇気と、この故郷を良くしたいという燃えるような情熱を胸に、33年の歴史を築いた社団法人新湊青年会議所と10年の歴史を築いた社団法人射水青年会議所が統合し、現在の公益社団法人射水青年会議所が創立されました。昨今、激しい変化の時代の中、これまでの常識は通用せず、当たり前だと思っていた価値観や考え方、生活様式は当たり前ではなくなり、日々新たな価値を創造し続けることが求められていますが、我々がこの故郷に求められることは、この20年間で激しく変化してきたのでしょうか。我々の先達が20年前に抱いていた志と、今の我々が大切にしている志は果たして本当に違うものなのでしょうか。今こそ、射水青年会議所が、この故郷にとって、我々の人生にとって、我々の家族や社員にとって、本当に必要であるという存在意義や目的を明確にし、我々が掲げるこの故郷がこうありたいと願うビジョンに向かって、一人ひとりの英知を結集し、不安や恐れを抱えながらも一歩踏み出す勇気をもち、再び心を燃やして、この故郷の課題に取り組む必要がある、そのような時代に突入しました。

「62年の歴史」

我々射水青年会議所は、本年で創立20周年を迎えましたが、この19年間で現在の射水青年会議所が形成されてきたわけではありません。振り返ると、新湊地域の限りない発展を願い活動を続けてこられた33名の歴代理事長と先輩諸兄、旧射水郡部を明るく豊かにしたいと願い拡大分離を経て活動を続けてこられた10名の歴代理事長と先輩諸兄の、英知と勇気と情熱があったからこそ、そして今もなお先達の教えが脈々と受け継がれてきたからこそ、今の我々が存在しています。国際交流事業や青少年育成事業など、様々な形で先達の想いは今も引き継がれています。時には、この伝統というべき事業を、時代背景や社会情勢などの理由によって実施をすることが叶わず、涙を飲まざるを得なかった時代もあったと聞いています。我々は、この創立20周年という節目を好機とし、この62年間の歴史を振り返り、先達の智慧から学びを得、10年先、20年先の明るい豊かな故郷を見据え、新たな種を蒔く事業を展開することが大切です。そのための一歩として、昨年度、我々は明るい豊かな故郷・射水の実現に向けた中長期的なビジョンを策定しましたが、激しい時代の変化とともに、様々な価値観が変化する中でも、変わらないもの、決して変えてはいけないもの、大切にしなければならない先達の智慧や教訓を土台として、新たな時代の一歩を踏み出しましょう。

「これぞJCの国際交流」

青年会議所は、恒久的世界平和を追求するための世界的なネットワークを有しており、国際交流の機会を数多く経験することができます。中でも、我々射水青年会議所は、台湾中正國際青年商会、韓国西仁川青年会議所、シンガポールオーキッド青年会議所との間で姉妹締結を結び、これまで幾度となく国際交流を行って参りました。過去に、日本との関係が国際的・政治的に悪化した時期や、先のコロナ禍で自由に互いに行き来することができなかったときにも、それらを一切問題とせず、真の友情のもとに、これまでと変わらない関係を築いてくることができたと断言できます。ではなぜ、このような強固な絆が、今なお続いているのでしょうか。それは紛れもなく、先達が築いてこられた信頼関係を前提として、メンバーの誰もが明るい豊かな社会を実現したいという共通の目的を持っているからに他ならないのではないでしょうか。だからこそ、我々は、この射水青年会議所にしかない国際交流を継続し、それぞれの姉妹JCのメンバー自身が、どのような思いでJC活動を行い、どのような価値観を大切にしているのかという志を、互いに知り、分かち合える関係をさらに築いていくことが大切です。本年は、さらに強靭な絆を醸成すべく、相互の理解をさらに進めて参ります。そして、国際交流の意義や目的について、今改めて先達の想いに心を寄せ、未来を見据えた国際交流を行って参ります。

「人生の目的を持つ」

なぜ、青年会議所は、20歳から40歳までという年齢制限が設けられ、この故郷に住まう青年経済人のみが入会できるという組織なのでしょうか。今、我々が過ごしているこの青年期は、我々の人生の中でどのような時間であり、どのような意味を持つのでしょうか。もし、明日が、我々の人生最期の日だとしたら、皆さんは何をするのでしょうか。
青年会議所には理念、目的、ビジョン、そしてミッションがあります。組織が強靱な絆で結ばれ、一枚岩となって同じ方向に突き進むためには、志を同じくすることは本当に大切なことです。何もこれは、組織に限ったことではありません。羅針盤を持たずに航海する船がないように、我々個人の人生にも理念や目的がなければ、将来、目指すべき方向が定まらず、本当の意味での成長は得られません。皆さんには人生の目的があるでしょうか。青年会議所が明確な理念や目的をもつように、我々一人ひとりも本当に大切にすべき明確な理念や目的をもち、この射水青年会議所があったからこそ、我々が存在し、この故郷が存在し、家族や社員、そしてこの仲間たちが存在するのだという明るい未来を、明確に思い描くことが大切です。そのためには、今よりも良くなりたい、人生をよくしたい、組織・会社を良くしたい、家族や社員と幸せになりたい、という燃えるような情熱が必要です。メンバーが一丸となって共に心を燃やし、縁ある全ての人たちを明るく照らし出せるような運動活動を行って参りましょう。

「人のために行動する」

青年会議所のメンバーの多くは、家族や会社、関係諸団体といった組織に属していますが、なぜ、組織というものが必要なのでしょうか。人はどのような所に集まるのでしょうか。そしてなぜ、先達は我々を青年会議所に招き入れ、会員拡大を続けてきたのでしょうか。
青年会議所では、様々な成長の機会があり、返事はハイかYESか喜んで、頼まれごとは試されごとだという教えを受け、厳しさの中にもどこか優しさがある、そんな豪傑な先輩に導かれて活動してきたメンバーが多いと思います。これは、真にその人の成長を願っての行動であります。先輩達は、我々が無意識に作ってしまう心の壁・心の制限を取り払うために、成長の機会を与えて続けて下さいました。人は、どうしても自分が可愛くて利己的になったり、つい楽な方に流されたりしがちですが、そこに大きな成長を得ることはできません。常に高い志をもち、高い目標を掲げ、飽くなき自己研鑽に励むからこそ、大きな成長を得られ、その結果、成功を手にすることができます。そして、誰かのために、家族のために、仲間のために高い志を掲げ、成長を追い求め続けるその姿にこそ、人々は魅力を感じ、自分も良くなりたい、そうなりたいと共感し、周囲に人々が集います。ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨かれないように、人は人でしか磨かれません。我々のたった一度の人生、同じ時代に生まれたこの仲間とともに、一人では到底達成することができないような高い志を掲げ、何が何でもそれらを達成するために、仲間と共に成長して参りましょう。

「子ども達の真の幸せとは何か」

2023年に開催されたG7富山・金沢教育大臣会合では、今後の子ども達の教育のあり方について、これからは子ども達の自己肯定感を醸成し、STEAM教育・課題解決型学習が大切であるとともに、これからの多様な社会に順応するためには、海や国境を越えた交流が必要不可欠である、話し合いがされました。我々が生まれ育った環境とは大きく変化した昨今、子ども達は我々が経験したことがない時代をこれから生きていかなければなりません。そんな時代だからこそ、自分自身が尊く、価値がある存在であるという自己概念を大切にし、目の前の困難な壁に立ち向かうことができる勇気と、これまでの常識に囚われず、多様な価値観に触れ、新たな価値を自ら創造することができる創造力を育むことが大切です。我々青年会議所だからこそ、多様な知識や人脈を活かし、成長の機会を提供し、積極果敢に伝統的な国際交流の機会を提供するなどして、子ども達が様々な文化や価値観に触れ、改めて我々の母国を顧みることで、本当に必要な成長を得ることができます。子ども達が一人ひとりに合った真の幸せを手に入れられるよう、我々の智慧を結集して参りましょう。

「この故郷には射水青年会議所がある」

あなたの故郷に青年会議所がなくなったらどうなるでしょうか。青年会議所に入会して良かった、と何気なく感じている人は多いでしょうが、本当に青年会議所での学びが、我々の人生、家族、そして会社に、どのような影響を与えているのでしょうか。その学びは、この故郷にどんなインパクトを与えているのでしょうか。ただただ、議案書を作成したり、議案書にそって事業を実施し、事業実施後に参加者アンケートを集めたりするだけでは、青年会議所がこの故郷に与えたインパクトを測ることは困難です。一人ひとりが、日々の活動や各種会議、委員会活動に本気で取り組み、心からそれらを理解しようとし、目の前の問題・課題と常に真剣に向き合う姿勢が大切ではないでしょうか。この故郷をつくるのは人であり、この故郷の発展には人の成長が必要です。真のまちづくりには、この故郷を、誰よりも真剣に愛する人を育てることが必要不可欠なのです。明るい豊かな社会を実現したいと願う我々こそが、互いに心を磨き、人を磨き、愛する故郷をつくっていかなければなりません。青年会議所は、そういう組織でなければなりません。本当にこの故郷に必要な組織でなければなりません。覚悟をもって、我々の使命を全うして参りましょう。

「共感を生み、変革の起点となる」

青年会議所はよく、実施する事業内容は良いが参加動員は苦手だ、と揶揄されることが多々あります。もっと参加動員があればもっと良い事業だったのに、もっとこうすれば多くの参加者を募ることができたのに、と嘆いている姿をよく目にすることがあるでしょう。これは、青年会議所の運動や事業が市民に理解されず、浸透していないからというわけではなく、我々の事業に対する想いや、この故郷をもっと良くしたいと心から願う情熱が市民には未だ伝わっていない、ということを表しているのではないでしょうか。情報をただ発信し、参画を呼びかけるだけでは市民の心に響くことはありません。まずは、共感はどのようにして生み出されるのかを真摯に考え、我々の今の伝え方が効果的かを問いかけ続けることが大切です。そして、もっともっと情熱を持って直向きに市民の皆さんにメッセージを伝えることで、やがて我々の想いが伝わり、市民の皆さんに共感を生み、我々はまさにこの故郷の変革の起点となることができます。縁ある全ての人の共感を生み続け、明るい豊かな故郷の実現に向けて邁進して参りましょう。

「なぜ会員拡大が大切なのか」

皆さんは、誰に誘われて、この青年会議所という学び舎に入ったのでしょうか。もちろん、自ら門戸を叩き、青年会議所に入会したメンバーもいますが、誰かの紹介によって青年会議所のことを知り、あるいは過去に青年会議所が主催する事業に参加して知ったという方もいるでしょう。では、なぜあなたは青年会議所に入会したのでしょうか。地元の先輩に誘われたから仕方なく入った、取引先の代表に誘われて仕方なく入ったという理由を思いつくかもしれませんが、しかし心の中では、もっと成長したい、何か故郷のために貢献したい、もっと人脈を広げたいと自ら内発的に決心をして入会したのではないでしょうか。会員拡大の本質は、明るい豊かな社会を築くために、地域を愛し、志を同じくする仲間とともに成長し、その仲間にもっと良くなって欲しいと願う友情にあります。この故郷のために、その仲間の成長のために、会員拡大を行い続けなければなりません。
また、新たなメンバーに入会してもらうことのみが会員拡大ではありません。青年会議所の存在意義や目的を相互に理解し、青年会議所の仲間が、自らの人生が成功するためになくてはならない存在であると心から想い、強靱な絆で結ばれることで、会員拡大は益々加速します。射水青年会議所はどのような団体ですか、僕がJCに入ってどんなメリットがありますか、JCに入って本当に成長しますか、と会員候補者に聞かれて、100%の自信を持って即答できるメンバーはどれだけいるのでしょうか。会員拡大の本質を、愚直に突き詰め、射水青年会議所を愛し、仲間を愛して、成長し続けて参りましょう。

「新しい組織運営で大切なこと」

AI技術・IoT技術の発展とともに、コロナ禍の良い影響などによって、青年会議所の本分である会議の運営方法が格段に利便性を増した一方、過去では当たり前だったコミュニケーションなどが、効率化を図るゆえに、省略されてしまうことが多々あります。例えば、会議や例会の出席などを、SNSやメールを通じて簡略化し、一方的に情報を発信し、必要な情報は既に伝えたと、例会に参加しなかったのは欠席したそのメンバーのせいにする姿を目の当たりにします。果たして、これは、仲間に対する思いやりをもち、計画した事業に込めた想いを伝えようとするその伝え方に、全く問題は無いといえるのでしょうか。オンラインやクラウドサービスなどをもっと積極的に活用し、もっと会務運営の効率化を図り、簡略化を図ることも大切ですが、市民の皆さんに共感を生むのと同じように、仲間のメンバーに共感を生むためには、相手を思いやる気持ちが大切です。共感はやがて、もっと仲間に協力してあげたいという想いを生み、他のメンバーにもそれが伝播します。正論をかざし、数値的な効率を押しつけたりするのではなく、最新の技術を活用しながらも、省略しても良いもの、大切にしなければならないものを選択し、時代に即した新しい会務運営を確立していくことが大切です。とりわけ、財務運営の面では、経験豊富なメンバーの力を結集し、健全な財務運営を行うことはもとより、公益法人格の見直しを含め、3年後、5年後、10年後を具体的に見据えた財務運営を行わなければなりません。射水青年会議所の屋台骨として、運営幹事会・財政審査会を中心に、新しい時代の組織運営を実行して参ります。

「結びに」

戦後、辺り一面焼け野原で、夢や希望も持てず、絶望に立たされ、青空しか見えなかったところから這い上がった先達が抱いた志と、これまでの価値観が通用せず、経験したことがない様々な試練が待ち受けるこの混沌した社会に立ち向かわんとする今の我々の志は、本質的な部分で、同じ想いを持っています。志とは、誰のために、何かのために、我が命を捧げ、その天命ともいえる使命をどう全うするかという、我々が最も大切にすべき願望であります。この時代に生まれたという運命をただ受け入れるのではなく、万物の本質を見極め、自らの力で運命を決め、未来を決め、自らの人生の理念・組織の理念を全うしていかなければなりません。明治維新を支えた高杉晋作や伊藤博文などに大きな影響を与えた吉田松陰は、松下村塾において門下生らに対して、このように説きました。

「道の精なると精ならざると、業の成ると成らざるとは、
志の立つと立たざるとに在るのみ。
故に士たる者は其の志を立てざるべからず」

「精」とは、雑念を交えず一筋に実行し生きる様をいい、「業」とは、己の目指した学問や仕事をいうとされています。つまり、我々が人生を正しく全うに生き抜くことができるか否か、あるいは自らが掲げた目的や目標を達成することができるか否かは、志を確立することから始まり、高き志をもつことができれば、どんな学問や偉業も達成することができる、という趣旨を表現しています。私は、「愛する家族、社員、仲間、お客様そして縁ある全ての人を、物心両面で明るく豊かにし、幸せにすることを我が人生の目的とし、法律の専門家として卓越し、成長をし続け、世のため人のために奉仕し続けることを我が人生の天命とし、人生最後のその時を迎えるときに、あなたに会えて幸せでした、と言っていただける人生を全うする」という志を持っています。私たちは幸せになるためにこの世に生を授かり、家族、会社、地域が幸せになるために情熱を燃やし、明るい豊かな社会を実現していかなければなりません。我々には、必ずできる。我々の先達が、こうして地域を守り、発展し続けて下さいました。今度は我々の手で、この地域を明るく豊かにし、明るい未来のある子ども達に繋いでいかなければなりません。射水青年会議所の全メンバーはもちろん、家族、社員、仲間そして縁ある全ての人が幸せになるよう、志に生き、節目となる本年、新たな歴史の1ページを共に刻もう。